安倍政権と歴史認識について
~適菜収と清水忠史が語る~
日本を滅ぼした安倍政権②
適菜 二つの論点があります。第一点はそもそも安倍は歴史を知らないんです。安倍は「ポツダム宣言というのは、米国が原子爆弾を二発も落として日本に大変な惨状を与えた後、『どうだ』とばかり(に)たたきつけたものだ」という言葉を残していますが、ポツダム宣言は七月二六日。広島と長崎の原爆投下の日付は小学生でも知っているでしょう。要するに、義務教育レベルの知識がすっぽり抜け落ちている。国会でポツダム宣言に書かれた歴史認識について質問されると、安倍は「その部分は、つまびらかに読んでいない」と答えています。ポツダム宣言はわずか一三条で、プリント用紙二枚ほど。「その部分」も「つまびらか」もあったものではありません。読んでいないので咄嗟に嘘をついたのでしょうが、そのあと、「安倍首相はポツダム宣言を当然読んでいる」とする答弁書が閣議決定された。すでに日本はここまで来ているということです。
清水 戦後レジームからの脱却とか言いながら、戦争に関する重要文書さえ読まないんです。
適菜 第二点は安倍の「歴史は歴史家が判断すべき」という発言は正しいと思います。時の政権や権力者が恣意的に歴史を解釈していいわけがない。では、安倍が何をやってるのかといえば、恣意的な歴史の解釈です。日韓合意もそうですし、日本共産党とは相容れないところかもしれませんが、村山談話と河野談話を確定したのが安倍です。日本共産党は、河野談話は認めているわけでしょう。
清水 そうですね。
適菜 ただ、河野談話が作られた経緯はかなり怪しい。要するに、自民党と韓国政府が政治的判断で歴史を確定させたという経緯があります。慰安婦の強制連行はなかったとネトウヨみたいなことを言いたいわけではないですよ。ないことの証明はできませんし。もっと違う次元の話です。当時河野洋平は韓国側とのすりあわせはしていないと大嘘をついていた。自民党が調査した結果、証拠は出てこなかった。証拠がないということと、強制がなかったことは別の話ですから、それこそ検証を続ければいいだけの話です。しかし、証拠がないのに河野談話を通してしまったわけです。これは政治の越権です。歴史に対する罪です。歴史修正主義がどうこうと騒ぐ左翼に限って、こうした歴史の修正には口をつぐんだりする。日韓合意で一〇億円を韓国に流した件についても、時の政権が不可逆的に歴史を確定させようとしたわけで、強い違和感があります。
清水 一九六五年に日韓基本条約を締結して、当時のカネで一八〇〇億円くらいを経済支援して、それで韓国経済もよくなった。ただ、その時点で判明していない問題が将来発生したら、解決するためにお互いに努力するという取り決めがあった。元慰安婦だった人たちも、家族や子供の手前、自分が慰安婦だったと言えないということで、条約を結ぶときには、俎上に上らなかった。だから、日韓両国が向き合うのは正しいと思っています。ただ、朴槿恵が当事者の意見を聞かずに、日本政府と合意して一〇億円の基金を受け取ることを決めてしまった。
適菜 国連事務総長だった韓国の潘基文は「日本に一〇億円を返せ」と言いましたが、私はそれに賛成したんです。文在寅もあれは間違いだったと認めています。
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KEYWORDS:
『日本共産党 政権奪取の条件』
適菜 収、清水 忠史
日本共産党とは相いれない部分も多い。
私は、共産主義も新自由主義と同様、近代が生み出した病の一環であると考えているからだ。
日本共産党が政権を取る日は来るのか?
本書で述べるようにいくつかの条件をクリアしない限り、国民の信頼を集めるのは難しいと思う。
そこで、私の失礼な質問にも、やさしく、面白く、かつ的確に応えてくれる
衆議院議員で日本共産党大阪府委員会副委員長の清水忠史さんと
わが国の現状とその打開策について語った。
――――保守主義者・作家 適菜 収
作家・適菜収氏との対談は刺激的であった。
保守的な論壇人としてのイメージが強く、共産主義に対して辛辣な意見を包み隠さず発信してきた方だけに、本当に対談が成り立つのだろうか、ともすればお互いの主張のみをぶつけ合うだけのすれ違いの議論に終始してしまうのではないかと身構えたのだが、それは杞憂に終わった。
――――共産主義者・衆議院議員 清水忠史